弥富の"関係人口"を考える - 【コジローカル考】
「コジローカル考」始めます
こんばんは。編集長のコジロウです。
弥富の情報発信やイベント作りをこれまでやってきましたが、少し取材を離れてみて弥富のローカルのことを考える「コジローカル考」という記事の試みをやってみることにしました。
ローカルで出来ること、ローカルがやるべきこと、ローカルだから実現できることを考えてみます。
第1回目は「弥富の関係人口を考える」。
関係人口という言葉。雑誌「ソトコト」を愛読するような層ではもう知っていて当たり前の単語となり、総務省が提唱して日本が国をあげて取り組むようなものになりました。
先日ボクは、「関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション」著者のローカルジャーナリスト田中照美さんのお話を聞く機会がありました。
http://www.tanakaterumi.com/
弥富市は、金魚こそ有名な土地ではありますが、鋭いキラーコンテンツのような観光名所を持つわけでもなく、かと言ってとんでもなく田舎ライフが満喫できるような海・山・川に恵まれたような土地でもない。
こういう中庸で緩やかに進行が止まって行く土地にこそ、"関係人口の創出"(総務省用語)の意識的な取り入れが必要なのだと思う。
関係人口って何?
関係人口とはなんでしょう。
それは、観光などで一時的に訪れる「交流人口」とその土地に住む「定住人口」の間に位置する方々のこと。
総務省の関係人口のサイトでは、
「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。
地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。
と説明しています。
特に関係人口になりやすいパターンとして「①その土地にルーツがある方」(出身者とか学校に通ったとか)、「②スキルや知見を有する都市部の人材」、「③ふるさと納税寄附者」をあげています。弥富市はふるさと納税に積極的ではないので、①と②が狙い目というわけです。
総務省WEBページ(http://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/discription.html)より引用
超魅力的なコンテンツのない土地には、よそから定住するほどに熱狂的なファン「骨を埋める覚悟」のある人はなかなか見つけられません。
イベントや観光名所、名店が来れば、一時的に観光に来る「交流人口」は増えますが、これは長期的には続かないので、絶えず交流人口を呼ぶための努力が必要で、精神とお金と体力が減っていきます。
そんな中で、中庸的な田舎にもできるのがこの「関係人口」を作っていくということです。
関係人口になってもらうためのPR
関係人口になってもらえる人材の層というのは、観光客ではないのでキラキラブランディングは不要です。
「弥富はこんなにいいとこ!」「この店の◯◯は絶品だから食べてみて」というようなPR文句は刺さりません。なぜかって?関係人口層っていうのは、田舎のそういうものよりももっとレベルの高いものに囲まれた都会に住み、おいしい名店を回り、観光ではぶっちぎりの田舎を楽しみに行っているからです。
ちょっといい感じぐらいでは刺さらないし、ここに来てはくれない。
どういうことが刺さるのか、冒頭登場した田中照美さんに直接聞いてみました。
ズバリ、「課題の発信」と「狙い撃ち」の2つがポイントなんですって。
◆課題の発信
関係人口を増やすPRでは、キラキラ発信は捨て去ります。
「うちはこんなところが今ダメで、なんとかしたいと地元民は考えていて、ずーっと長い間「よそのもんなんかに任せられるかー」って手付かずでしたけど、もう限界。助けてください」
っていう課題をとことん突き詰めて、何が困っていてどうしていきたいのか議論した結果を発信する。綺麗な記事にはしない。ありのままの困りごとを相談する。
こういうのを"関わりしろ"と呼ぶそうで、「キラキラ輝く素敵な土地」には関わりしろがないんですね。
関係人口の層は、「もう完成してしまっている作品を見に行っても仕方がない」ってそう考えているんですね。
そんなキラキラ発信よりも「ここが困ってます、あなた関わってみませんか」と発信して、相手に「おー、これならボクの力を生かしてこの地域をいい方向に持っていけるかも」と思わせる。
◆狙い撃ちの発信
上記の通り、本当に関係人口として来てほしい層を突き詰めてターゲティングして、そこに届くように狙い撃ったメッセージを出すのも大事。
とかく、地域の課題を話し出すと「若者に来てほしいよねー」となりがち。
「若者」これは危険な曖昧ワードなんだそうで、「若者きてねー」というメッセージで「おー、我こそは若者だ。行ってみよう」なんて思う若者はいません。
もっともっと、地域の課題をピンポイントに解決してくれそうな人の像を考える。
若い必要があるのか、必要な知識は何か、あると嬉しい経験は何か、その人に何をどうしてほしいのか。
そうやって考えて「弥富出身で就職で上京したけど、一時的に帰ってきて一緒に農作業と祭りの運営だけやってみたい、今後も語り継げる30代の人」とか「介護の知識や経験があって、シルバー世代と一緒に交流しながらxxxの仕事ができるxx代くらいの方」みたいに狙い撃ってみる。
こういうPRの仕方が必要なのである。
田中輝美さんのお話の様子
関わりしろを求めている弥富の課題とは?
ということで、関係人口向けPRのポイントは押さえましたが、結局のところ、本当に困っている関わりしろ探しが一番のキーポイントになってくるわけです。
弥富市が置かれている状況や、市内の周りの方々が困っていることってなんだろうか。どうなればより良くなるんだろうか。そういうことが常日頃から話し合われないといけないんですね。
その点、先日実施された弥富市長選挙の際に登場した「未来の弥富市長比較サイト」にあった公開質問状でカテゴリーされている弥富の課題は、大きく捉えるには非常に良いと思います。
◆公開質問状の内容転載
1 あなたの公約のキーワード、最優先する政策課題は何ですか
弥富市だけで解決できない問題ですが、市長としてどのように考えますか
2 不可避な人口減少について
3 医療・介護の充実、健康寿命の延伸について
4 求められる子育て支援について
5 教育の機会均等、子どもの学びについて
弥富市に特有な課題への、市長として考え方と取り組みの姿勢について
6 きんちゃんバスなど、公共交通の確保について
7 公共施設の再配置・転用・活用について
8 合併の効果を最大限に活かすことについて
9 災害に強いまちづくりについて
政策を実行する行政機関の長として、どのように考え、どのように取り組みますか
10 政策を達成する手段としての市民との協働について
11 二元代表制に基づく市長と市議会の関係について
12 市役所の職員との関係づくりや組織の活性化について
上記は新市長になろうとしている候補者に宛てたものですから、かなり行政よりですし、一般の市民であるボクたちが考えるにはスケールが大きいかもしれません。
でもやっぱり、「先日もあそこが空き家になったし、人は減っちゃうよね。地域の秋祭りってどうなっちゃうのかしら」とか「最近は大型の災害も続いているけど、いざという時にどこに逃げたらいいの。老年のメンバーばかりになってきたけど、誰が手助けしてくれるの」とか「最先端の教育って行政任せでいいのかなー」とかとか。
こういうキーワードをとっかかりにして、自分たちの課題も考え始められると思うんですよね。行政が気にする課題は行政だけが解決するんじゃなくて市民がやれることもある。
市民が考えなきゃいけないこともある。
そんな中から、土地の人だけじゃ解決できなくて、よそから力を借りるとウンとよくなることが出てくるんですよ、きっと。
そもそもボクは弥富市にルーツがないので、定住していますがよそ者です。それでも何か模索して関わろうとしてきたら、このサイトとかイベントとか人脈とか、いろいろ生まれました。
関係人口を作ろう
うんと遠い土地や、大都会の中に、『課題を見つけて、住んではないけれど特定の地域と関わっていきたい』って、そういうことを探している人が少なからずいます。
本当はそんなでも無いものをがんばって下駄を履かせてPRする「キラキラブランディング」は卒業して、本当に地域のことを考えて、何を解決しないといけないのか、それをPRする「関係人口呼び込み作戦」を始めてみませんか。
そこに、よそ者のボクが感じた弥富の打開策がある気がします。
コジローカル考 No1 「弥富の関係人口を考える」2018.12.11
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